私は、このモーツァルトが言及している作品のスコアを見つけることはできませんでしたが、1777年にロンドンで出版された 《チェンバロまたはピアノフォルテのための六曲のやさしいディヴェルティメント》 をお聴きいただければ、全体的にモーツァルトと似た雰囲気を持っていることがおわかりいただけるかと思います。
ディヴェルティメントというタイトルは、ヴァーゲンザイルの場合と異なり、ソナタを意味しているわけではなく、初心者向けの優しい曲を集めた小品集です。それでもミスリヴェチェックの作風の一端を垣間見るには十分だと思います。全体的にモーツァルトと似た雰囲気を持っていると思います。
例えば第5番ト長調冒頭のテーマ(第1 ― 8小節)からモーツァルトの息づかいを聴くことは容易ですし、第6番ハ長調の第1楽章は、有名なKV330のソナタと全体的によく似ています。特に前者の(第7小節)は、後者の(第38
― 39小節)の音型と同じです。伴奏のパターンの変化も自在で、適度に左手も動き、両手の掛け合いも面白いです。
全体的にミスリヴェチェックのこの曲集には「歌」の要素が濃いように思いますが、これは必ずしもイタリアでの経験だけのせいではないのでしょう。ミスリヴェチェックの叙情性は、ガルッピやルティーニとも異なり、敢えて言えばボヘミアの民謡の要素から来ているのかもしれません。
ミスリヴェチェク:クラヴィーアのための6曲のディヴェルティメント
第4番 ト長調(16KB)
ミスリヴェチェク: 同 第5番 ト長調(20KB)
ミスリヴェチェク: 同 第6番 ハ長調(19KB)