モーツァルトに関するページの紹介

Mozart
紹 介
ピアノ作品・一覧
作品・一口メモ
演奏に関する箴言
同時代の作曲家
モーツァルトと楽器
モーツァルトの旅


ピアノ音楽の位置づけ

「クラヴィーアを初見で弾くなんて、ぼくにとってはウンコをするようなものです」
22歳になろうとしていたモーツァルトは、旅先からこう書き送っています。
モーツァルトは、作曲家であると同時に、天才的なクラヴィーア奏者、現代風に言えばピアニストでした。作曲家としてのモーツァルトの存在は、ピアニストとしてのモーツァルトの存在と不可分でした。
しかし、ピアノ・ソナタなど、今日のピアノ・リサイタルでよく弾かれるソロの作品について、モーツァルトはほとんど語っていません。オペラについて詳しい説明を書き残しているモーツァルトがなぜピアノ・ソロについて書き残していないのか?
おそらくその理由は、モーツァルトがピアノ・ソロの作品についてあまり重要なものとはみなさなかったからでしょう。ピアノ・ソナタなどのソロの作品は、モーツァルトにとっては、出版するためか、弟子の教材程度の扱いだったのかもしれません。
でも、それ故に、ピアノのために作曲された作品からは、モーツァルトの肉声が聞こえてくるような気がします。モーツァルトの体調や精神状態が割合にストレートに反映されているような気がするのです。モーツァルトのピアノ音楽作品は、膨大な彼の作品の中でも、やはり特別の意味を持つと思います。
そういう意味で、モーツァルトのピアノ音楽は、モーツァルトに近づく第一歩と言えるのかも知れません。 

モーツァルトを弾く上で

私は、子供の頃からモーツァルトを弾き続けてきました。モーツァルトをただ好き放題に弾くのではなく、モーツァルトが理想としていた音楽に、少しずつでも近づいていきたいと思っています。
モーツァルトが知るよしもなかった現代のグランドピアノでモーツァルトの作品を弾くとき、どのような点が課題となるのか ― 私はさしあたって、次のような点に関心を持っています。

・モーツァルトはどのような楽器を弾いていたのか。楽器の特性は作品にどのように反映されているのか。

・モーツァルトが弾いていたそのときどきの楽器の特性は、現代のグランドピアノでモーツァルトを弾くときにどのように考慮されなければならないか。

・モーツァルトが理想としていた音楽美、あるべき演奏とはどのようなものだったのか。

・モーツァルトはどのように弾いたのか。特にテンポ、フレージング、ディナーミク、装飾、アインガング、カデンツァなど。

・モーツァルトが書き残した自筆譜と当時、あるいは死後の出版譜、そして後世の人々による注釈(あるいは改竄)

・モーツァルトがクラヴィーアを弾いていた演奏環境(どのような場所で弾いたのか)

・演奏家としてのモーツァルトと聴衆との関係はどのようなものだったのか。

・モーツァルト自身が演奏したコンサートはどのようなものだったのか。

・モーツァルトはどのような音楽家の影響をどのように受けて、自らのピアノ音楽の作風をつくりあげていったのか。

・個々のピアノ作品に、モーツァルトの思い、体調、精神状態などは反映されているのか、いないのか。反映されているとすればどのようにか。

・見識ある後世の人々は、モーツァルトのピアノ作品をどのように受容していったのか。われわれがそれらの思索と経験の中から真に学び、受け継ぐべきものはどのようなものか。

もちろん、これらひとつひとつのテーマはたいへん重いものですし、私の手に余るのですが、毎日スコアに向かい、作品を弾きながら、これからも考え続けていきたいと思っています。

モーツァルトに関するページの構成

私のサイトの中で、モーツァルトについて取り上げているページの構成と内容は、次のようになっています。これらは、モーツァルトについて小著などを執筆した際に集めたデータや文献の一部です。以下のサイトでは、モーツァルト時代の鍵盤楽器のことを「クラヴィーア」と総称します。

クラヴィーア作品・一覧

モーツァルトのクラヴィーア作品の一覧です。ほかの楽器と一緒に演奏される作品は、基本的に除いています。

クラヴィーア作品・一口メモ

クラヴィーア作品の内容について、ごく簡単に記しています。

演奏に関する箴言

主としてモーツァルトをピアノで演奏する上で、私の心に響いた言葉を紹介しています。

同時代の作曲家

モーツァルトとほぼ同じ時代に活躍した主な作曲家について記しています。

モーツァルトと楽器

モーツァルトが生きた時代は、鍵盤楽器がチェンバロからピアノフォルテに移っていった時代に当たっており、その変遷について記しています。

モーツァルトの旅

モーツァルトの人生は、約3分の1が旅でした。モーツァルトの足跡を、暮らした都市、訪れた都市ごとに年代順にたどります。



モーツァルトに関する小著

モーツァルトを弾き続けてきて、調べたり、考えてきたことがらについては、少しずつ記していき、小著として以下のとおり、刊行してきました。ご覧いただければ幸いです。

作曲家別演奏法U モーツァルト 

(株)ショパン(2008年)

モーツァルトのピアノ・ソナタを題材に、全体イメージ、形式感、ディナーミクなどについて記しました。特に、青春の旅の中で生まれた、ハ長調KV309、ニ長調KV311、イ短調KV310そして、ウィーン時代後期の名作、ハ長調KV545を題材として、解釈と演奏法に触れてみました。

モーツァルトのピアノ音楽研究

音楽之友社(2008年)

「ピアノ音楽クロニクル」と題し、モーツァルトのピアノ作品を、年代順にたどりながら、それぞれの作品が作曲された背景、作品の特徴、演奏家から見た作品像について記しました。また、モーツァルト時代の鍵盤楽器、優れた同時代人であったハイドンとの比較、演奏慣行としての即興演奏などを取り上げました。 

モーツァルト・18世紀ミュージシャンの青春

知玄舎(2004年)

モーツァルト十代の音楽家像について演奏家の立場から記しました。三度にわたるイタリア旅行とザルツブルクでの日々が中心です。情報の少ないザルツブルク時代ですが、とりわけクラヴィーアのために書かれた作品をじっくりと弾きこみ、ほかの作品を繰り返し聴きこんで、この時期のモーツァルトの思考や心情に想いを馳せることにしました。

モーツァルトはどう弾いたか

丸善出版(2000年)

天才的なピアニストであったモーツァルトは、どのような演奏をしていたのか。モーツァルトが残したスコア、そして言葉を読み解き、また、当時の楽器、演奏慣行、コンサートの模様なども手がかりにしながら、モーツァルトの演奏を蘇らせたいと思いました。たとえば、トルコ行進曲のテンポ感についてなどです。

『モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪
― 天才と同時代人たち』


音楽之友社(1998年)

モーツァルトが活躍した18世紀後半のヨーロッパでは、星の数ほどの音楽家たちが活躍していました。モーツァルトは、同時代の作品を学び、吸収し、自らの作風をつくりあげていきました。そのような学習と成長の過程をたどりながら、モーツァルトがいきついたクラヴィーア音楽の姿について、同時代の作品と比較しながら考えてみました。



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