クラヴィコード 2 

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クラヴィコードの音程

チェンバロやピアノでは、それぞれの弦は、それぞれひとつの音程の音を受け持っています。
これに対し、クラヴィコードでは、ひとつの弦を、異なる2つのタンジェントが打つようになっている箇所があり、言い換えればひとつの弦でもって、異なる2つの音程を受け持つ場所があるわけです。
極端に言えば、1本の弦でもタンジェントを順番にずらしておいておけば楽器として成り立つわけですが、そうすると同時に複数の音を鳴らすことができない、つまり和音を弾くことが出来ないので、複数の音を出すためには、ある程度の本数の弦が必要になります。

ピアノに慣れ親しんでいる私にとっては、クラヴィコードのこの特質に慣れるのに少し時間がかかりました。同時に鳴らすことのできない音、レガティッシモ(前の音がほんの一瞬残る状態で次の音を弾く)が出来ない隣接音をちゃんと把握しておかないと、「あ!音が出ない。」というようなことが起きてしまうのです。
しかし、この機能のおかげで、奥行きをかなり省スペースできることになり、それによって持ち運びも可能な大きさにまでなっています。

モーツァルトが愛用

クラヴィコードは、モーツァルトにとっても身近な楽器だったようです。
1763年7月、西方への大旅行に途中、モーツァルト一家は故郷のアウグスブルクに立ち寄りますが、このときレオポルトは、ヨハン・アンドレアス・シュタインから、旅行用のクラヴィコードを購入しています。この後モーツァルト一家は、パリやロンドンを訪れますが、逗留先でこのクラヴィコードをつまびき、作曲にいそしんだのかもしれません。
もちろん、モーツァルトはチェンバロ、そして後にはピアノフォルテを自宅に置き、これらの楽器を使って作曲したわけですが、同時にクラヴィコードも愛用していたのではないでしょうか。
ウィーン後期の名作、ハ長調K545のクラヴィーア・ソナタは、4オクターブ半の私のクラヴィコードで、音域はぴったり収まります。この名曲をクラヴィコードで弾くとき、現代のグランドピアノで弾くときとはまた異なる、デリケートな味わいが感じられるような気がします。

ジルバーマン