CD 批評 (2025)Yuko HISAMOTO  CD

久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.3 ※配信限定アルバム
(2025/10/7)

ぶらあぼ (2025年11月号)

久元祐子のベートーヴェン・ツィクルス第3弾。初期ソナタ第2番は、下行音の主題で始まるが、音階上行のパッセージがとても印象的だ。久元はきれいなタッチで、自然に伝えてくれる。それは終楽章のロンド主題の上行走句まで繋がる。第7番は、主題に力感がこもり、弱音からあっという間にffまで駆け上がる。緩徐楽章のバスの動きや切れ切れの楽句に悲哀が滲み出る。第11番冒頭主題では、第1主題の機動性と第2主題の天に昇るような音色変化にハッとさせられる。メヌエットの愛らしい優雅さも聴きものだ。第12番は葬送行進曲に焦点があるが、変奏の第1楽章も、ロンド終曲も味わい深い。(横原千史)

久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.2 ※配信限定アルバム
(2025/5/7)

ぶらあぼ (2025年6月号)

モーツァルトをはじめ、古典派の作曲家のスペシャリストとして活躍するピアニストの久元祐子。彼女は2023年からベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲演奏会に挑んでおり、本盤は昨年行われた第2回のライブ録音となっている。プログラムには第3·10·13番、そして第14番「月光」が選ばれた。いずれも当時の楽器の限界に挑んだ作品であり、1795年製のアントン・ヴァルターの復元楽器で奏でられたことで、その特別さをより強く実感できることだろう。久本の精緻な技術とニュアンスに富んだ音色はそれをさらに輝かせており、作品の新たな魅力にも数多く出会えるはずだ。(長井進之介)

CD批評 2024 へ