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栄光のモーツァルト ピアノ・ソナタ KV457, 533/494, 545 (2023/7/7)
モーツァルトのピアノソナタ全集の第5弾。使用楽器はベーゼンドルファーの新型280VC、それも久元祐子のために作られたというピラミッド・マホガニーの特別モデル。久元は粒立ちと木の温もりが共存する音を楽器から引き出し、モーツァルトがウィーンで活躍した時代の作品を奏でる。広く親しまれるKV545のソナタでは、音の輝きの変化、細やかなニュアンスの妙で引きつける。続く幻想曲やKV457のソナタという短調の作品で暗転する音、リスト編「アヴェ・ヴェルム・コルプス」の神秘的な音など、一つの楽器とは思えない多彩な音色を聴くことができる。(高坂はる香)
・ショパン(2023年9月号)
道下京子のCD PICK UP! 国立音楽大学・大学院教授の久元祐子は、早い時期から歴史的楽器による演奏に取り組んできたピアニスト。特にモーツァルトの演奏に定評がある。このCDはモーツァルトのピアノ・ソナタ第5弾で、彼のウィーン時代のピアノ・ソナタなどを収録。使用されたピアノは、ベーゼンドルファーModel 280VC (ピラミッド・マホガニー)。久元は、コントロールされた指先から、ぬくもりあふれる音と細やかな息遣いを生み出し、アーティキュレーションを明確に表現している。《ロンドKV485》については愛らしい演奏も少なくないなか、彼女のこの演奏は感情に流されることなく、作品の全体像をすっきりと示している。《ロンドKV511》でも、作品そのものを明晰に描き上げ、デリケートなペダルによってうっすらと憂いを帯びた表情を作り出す。ピアノ・ソナタでは、3つの楽章を大きく弾き分け、メリハリの効いた作品に仕上げている。
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