CD 批評 (2018)

  Yuko HISAMOTO  CD

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久元祐子 《久元祐子with280VC ベーゼンドルファーで奏でるモーツァルト》
(2018/1/7)

・CDジャーナル(2018年4月号)
評:長井進之介
久元祐子with 280VC〜ペーゼンドルファーで奏でるモーツァルト〜
ALM-コジマ録音・ALCD-9178\2,500(1.7)
ウィ一ンの香りを感じる音色をもつベーゼンドルファーの2015年モデル280VCを使用したリサイタルのライヴ録音。
日本を代表するモーツァルト弾きである久元の優雅さを湛えた美音の魅力が、ベーゼンドルファーのまろやかな音色と重なり合うことで、非常に贅沢な気分にさせてくれる。★(進)
●モーツァルト:幻想曲二短調(久元祐子補筆)/グレトリの歌劇「サムニウム人の結婚」の合唱曲/「愛の神」による8つの変奏曲ヘ長調/ピアノ・ソナタイ長調「トルコ行進曲付き」●ショパン:ノクターン第2番/ワルツ第6番「小犬のワルツ」他 [演]久元祐子(p)[録]L2017

 

・音楽現代(2018年3月号)
推薦  本来はベーゼンドルファー社のピアノの新製品、モデル28OVCのプレゼン用のCDだが、内容的には考え抜かれた中身の濃い1枚になっている。まずモーツァルトの幻想曲では、久元自身が未完成のまま残された終止部を補筆完成させていること。変奏曲では繰り返しを省略しているし、アンコールのショパン2曲では、即興的な装飾音符を加え、名技性を強調していて、極めてアカデミックな考えで一貫されている。また楽器を無理なく鳴らせ、決して表現が過剰にならないのも、久元の演奏家としての美質に挙げられる。コンクールなどに縁のない、学究生活の中から、彼女のような演奏家が生まれて来るとしたら、この世もそう捨てたものではない。 ☆出谷 啓

・ぶらあぼ (2018年2月号)
多様な鍵盤楽器を操る久元祐子の新譜は、ウィーン伝統のピアノの響きを今に伝えるベーゼンドルファーの最新モデル「280VC」によるライヴ録音。モーツァルトがウィーンで活動しはじめた頃の作品を集めた。幻想曲二短調は底知れぬ深奥からの響きを感じさせ、「KV331 のソナタ「トルコ行進曲付き』」は、2014年発見の自筆譜による演奏をいち早く録音した久元が、解釈を熟成させ自然な息遣いで聴かせる。「KV332」のパッと花開くような第3楽章は圧巻。アンコールのショパンも収録。繊細な表現にどこまでも応えるピアノと久元との真摯な対話が伝わるアルバムだ。(飯田有抄)

 

・レコード芸術 準特選盤 (2018年2月号)
濱田滋郎  ● Jiro Hamada
推薦久元祐子は国立音大教授をつとめると同時に、とりわけモーツァルトの演奏および研究において高い評価を受ける存在。キャリアからも、そろそろ”大家”の域に加えられてよい人である。当アルバムは2017年9月8日、サントリー小ホールにおいて、ベーゼンドルファー(モデル280 VC) を用いて催されたリサイタルのライヴ。プログラムはオール・モーツァルトで、初めに《幻想曲》二短調を奏でるが、周知のようにこの曲の通常聴かれる版は、結びの部分が未完成であったため、他者によって補筆されたもの。久元は、モーツァルトに一家言を持つ者としてそれに満足せず、最後の部分に、最初の二短調の楽想を呼び戻す形をとる版を作って奏でている。この名曲が、悲しみからすっかり幸せになった形で終わるのか、あるいは悲しみに引き戻されて終わるのか。微妙なところだが、久元の流俵ー思い返せば同様のことを、かつて内田光子も披露していたーから、一理以上のものが感得できることは確か。続いては《変奏曲》K352、この快い作品はおおよそリピートなしで颯爽と弾き抜けるが、ライヴであることを思えば妥当と言えよう。あとは主部となり、K331、332、333、イ長調、へ長調、変ロ長調の主要作ソナタ3篇が、終始豊かな格調と興趣をおびて演奏される。K331は、2014年9月に至って発見された自筆譜による演奏のため、部分的に通常と異なるのも興味深い。アンコールは、変わり身を見せてショパンを2曲。

那須田務 ●Tsutomu Nasuda
久元祐子は2014年に《トルコ行進曲付き》ソナタの自筆譜が発見されると、翌年には従来版と自筆譜版をシュタインとベーゼンドルファーで聴き比べるCDをリリースするなど、学究的かつ知的なアプローチに特徴がある。その新録音は2017年9月8日にサントリーホールのブルーローズで行なわれたコンサートのライヴ。オール・モーツァルト・プログラ ムである。ピアノはベーゼンドルファー(280VC)。同社は19世紀末までウィーン式楽器を製造していたこともあって、どこかフォルテピアノの音色を残し、その独特な魅力に根強いファンがいる。当アルバムで注目されるのは1 曲目の《幻想曲》二短調。最後の数小節が未完なので通常はアンドレ版を弾くが、久元は自身の補筆完成版を使用。《幻想曲》ハ短調のコーダに似た処置だからか、その先にハ短調のソナタが続くような錯覚になる。《トルコ行進曲付き》は自筆譜に基づいて修正された楽譜を使用。フォルテピアノも弾く人らしく、丁寧かつ明快なアーティキュレーションで音楽を語らせる。K332も然り。微妙なテンポの揺れが即典的な趣を醸し出すが、個人的にはより多感に表情をつけてもいいと思う。演奏が進むうちに一層タッチが澄んで表現の深度が増している。これもライヴの良さだ。ベーゼンドルファーらしい木の温もりを湛えた柔らかな音色が好ましい。アンコールはショパンが2曲。こちらもウィーンの楽器で気品に満ちたフレージングを聴かせている。

石田善之 ●Yoshiyuki Ishida
[録音評]タイトル通り、ベーゼンドルファーの音色をも味わおうというコンサートで、2017年9月8日、サントリーホールのブルーローズでの演奏会の記録である。拍手やアンコールを含み、それなりの聴衆の気配も感じさせる。ピアノの音色は若千近めで反射成分をも含むホール・トーンもうっすらと交え、生々しく伝わる。ほどよい距離感で楽器のサイズをも感じさせる。

 

・MOSTLY CLASSIC (2018年3月号)
評:伊熊よし子さん
モーツァルトがウィーン定住後まもなくの作品を収録
さまざまなメーカーの楽器を所有し、歴史楽器を用いた演奏も行っている久元祐子が、ベーゼンドルファーModel 280VC を使用してモーツァルトをライヴ収録。この楽器は歌う音、温かな音色、ダイナミックレンジの広さ、音色の多彩さを特徴としている。ここではモーツァルトがウィーン定住後まもなく作曲した作品を集め、モーツァルトのピアノ曲の魅力を存分に伝えている。「トルコ行進曲付き」では2014 年自箪譜発見に基づく新版で演奏。

 

CD批評 2015