CD 批評 (2011)

  Yuko HISAMOTO  CD

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久元祐子 《学習するモーツァルト ― モーツァルト:ピアノ・ソナタ KV283,282,284 ―》
 (2011/11/7)

・レコード芸術 (2012年12月号)
濱田滋郎  ● Jiro Hamada
 これまでに畿点かを聴いてきた久元祐子のディスクであるが、それらを特色づけるのは、良い意味での"先生らしさ、端正さのうちに匂う優しさと気品の高さであろうか。モーツァルトに関する著書も出されているだけに、ディスクそれぞれに何らかの"啓蒙的"な意図が含ませてあることも特色で、今回は「学習するモーツァルト」と名づけ、モーツァルトがJ.C.バッハから汲んだ影響を、実際に楽曲を通じて検証することを眼目にしている。こうしたことはポイントを広いながらのレクチャー・コンサートならよりいっそう明確に理解されようが、このように楽曲全体を通しての演奏、それを補うブックレットの解題を通じても、まずはよくわかる。改めて言うまでもなく大パッハの末子であるヨハン・クリスティアン(1735 - 82)は兄たちと違って若い頃イタリアで修行し、1762年からは、ヘンデルのようにそこで名声を挙げようとロンドンに渡って活勤した。モーツァルトは70年、まだ14歳の頃、J.C.バッハの《鍵盤ソナタ集》作品5を知って愛着を抱き、それらのいくつか ― 当盤に演奏されている第3番ト長調、第2番ニ長調を含む ― クラヴィーア協奏曲に編曲している。このことは当然、モーツァルトが発表した初期の6曲のピアノ・ソナタにも影響を及ぼした。その事実を耳から確かめて貰おうとノ久元祐子は、K282〜284の3曲の合間にくだんのJ.C.バッハ作品5よりの2曲を挟み込んで演奏する。興味深い佳演盤。

那須田務 ●Tsutomu Nasuda
推薦 久元祐子によるモーツァルトのソナタ・シリーズの1枚。モーツァルトがバッハの末子のヨハン・クリスティアン・バッハ(以下パッハ)に影響を受けたことは良く知られている。久元もシリーズ第1弾の「青春のモーツァルト」でモーツァルトの300番台の3つのソナタとバッハのソナタ作品17の5を弾いて両者の影響関係を考察するよすがとした。今回のアルバムはそれをさらに敷衍してくいる。取り上げられている曲は、少年時代のモーツァルトがピアノ協奏曲に編曲したバッハのソナタ作品5からの2と3を、変ホ長調K282〜284と並置し、両者の影響関係や類似点、相違点を明らかにしようとする。実際、バッハの音楽は優美で自然。一方のモーツァルトも同様に感じられるが、実際には多様で変化に富んでいる。それがよく分かるのも久元の演奏に負うところが大きい。バッハの作品5の第1楽章はこの上なく典推に、モーツァルトは繊細かつ明快に弾いて、それぞれの魅力を引き立てる。二長調K284と作品5の2も同様だ。モーツァルトが協奏曲にも編曲したバッハの作品5の2はギャラントな魅力に溢れた曲だが、ここでも生き生きとした演奏を聴かせている。一方ソナタK284は作品の規模にふさわしくスケールが大きい。モーツァルトの個々のソナタの特徴をよく捉えているし、何よりもモダンのピアノでバッハをここまで魅力的に聴かせられるのはすばらしい。

・音楽現代 (2012年12月号)
推薦 久元祐子の新盤。今回はモーツァルトとクリスチャン・バッハの作品集。クリスチャン・バッハのソナタはモーツァルトが協奏曲に編曲したことで知られるその原曲。久元はアーティキュレーションやタッチのコントロールに対し非常に厳しい信念を持っているのが 聴くほどに伝わり、豊かなに振幅するアゴーギクはそれがあってのことだと確信する。C・バッハはヘブラーの録音が懐しい。ヘブラーの陽気な演奏に対し、久元は慎重な取り組み。流れるようなバッハの旋律線と、カデンツ機能が単純だからこそ味わいを深めること ができるという必殺技を披露してくれる。モーツァルトとの音楽性を同等に置くための技である。久元の愛情に敬意を払いたい。   ☆横島 浩
・ショパン (2012年12月号)
道下京子の『CD Pick Up!』
このアルバムは、モーツァルト初期のピアノ(クラヴィーア)ソナタに、J.C.バッハのクラヴィーア・ソナタを挟んで構成されている。ロンドンを訪れた少年モーツァルトは、大バッハの末子の音楽に深い感銘を受けた。ここで取り上げられているモーツァルトの音楽にも、バッハの息吹を随所に感じさせる。演奏者の久元祐子は、東京藝大大学院に学び、現在は国立音楽大学准教授。オリジナル楽器での演奏にも積極的に取り組んでいる、まずもって感じたのは、バッハにおける典雅でフレッシュな調べである。シンプルで透き通った音は、当時の響きを意識しているかのようであり、しなやかなタッチは音楽に生気を与えている。躍動感のあるモーツァルトも、透明感があり、好感が持てた。

CD批評 2009