CD 批評 (2007)

  Yuko HISAMOTO  CD

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久元祐子 《青春のモーツァルト K311,309,310》 (2007/8/7)

・レコード芸術 (2007年10月号)
濱田滋郎  Jiro Hamada 

(準)これまでにも、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、あるいは「名曲集」の類、さまざまなディスクを出してきた中堅奏者の久元祐子による、あらたなモーツァルト・アルバム。モーツァルトに関しては、2,3の著書もあり、レクチャー・コンサートなども催している人だけに、一家言を持つ立派な演奏が展開される。曲目はニ長調K311,ハ長調K309、イ短調 KV 310の順にソナタを並べて弾き、ハ長調とイ短調の合間に、ヨハン・クリスティアン・バッハ作になる《ソナタ》イ長調作品17 - 5を配しているのがひとつの趣向。これは、この作曲家からモーツァルトへの影響があったことを踏まえての選曲であろうが、作品自体、2楽章のみで9分ほどのものながら、なかなか才気に富んで快く、美しい。モーツァルトの演奏は、粒立ちがよく、リズムの刻みかた、というか持って行きかたに微妙な味わいがあり、低音をしばしば効果的に、しかもほどよく強調して立体感を生み出すなど、音楽的配慮が行きとどいている。プログラム・ノートは(著作もある人なので当然ながら)ピアニスト自らが執筆しており、それも示唆に富んでいて一読に値しよう。たとえぼ二長調のソナタについて、「このソナタは、反復のしかたにもよるが、第1楽章よりも第2楽章が、第2楽章よりも第3楽章が長く、終楽章に重点があり、しかも終楽章をめざして進んでいく」といった指摘には、あらためて「なるほど」と頷かされた。演奏が通りいっぺんのものに終わらないのも、そうした読みの深さに支えられてのことなのだ、と納得した。

神崎一雄 Kazuo Kanzaki
(録音評)どちらかと言えば鮮明なピアノのサウンドだが、鮮明さの中に温かみをも潜ませた録音。アタックをしっかりと捉えながら、豊かな響きをも収めていて、硬質感や刺々しさを感じさせない。ピアノのサイズ感も、眼前いっぱいに野放図に拡散的に広がったりすることがない。鮮明さが軸になった録音だが硬質感のないのが印象的だ。長野県、茅野市民館コンサートホールでの2007年4月の収録。<90>  
・レコード芸術 (2007年9月号)
"New Disc Collection"  近藤憲一   

安定感があり、明快な久元 祐子のモーツァルト
 それではと、モーツァルトの音楽を 虚心坦懐に聴 くべくプレーヤーに入れたのが、久元祐子のアルバム。モーツァルトのK309〜311のピアノ・ソナタ(収録は、311,309,310の順)に、彼が大きな影響を受けたヨハン・クリスティアン・バッハの《(ソナタ イ長調 作品17-5》が KV 310の前に併録されている。
 久元の演奏は音の粒が揃っており、曲想の描き分けが実に明快。20歳代初めのモーツァルトの快活な創造精神と呼応した演奏が繰り広げられていく。爽やかな曲想のJ・C・バッハのソナタを軽て耳にした名作《イ短調ソナタ》では、もう少し情感の揺らぎが欲しいとも思わせるが、とにかく全体にモーツァルトへの思いが誠実に伝わってくる演奏になっている。 

・ぶらあぼ (2007年10月号)
新譜 ぴっくあっぷ 

情報満載のウェブサイト(モーツァルト・ファンなら必見)を持ち、いくつかの著作でも高い評価を受けている久元祐子の新盤は、予想にたがわぬ充実した内容だ。モーツァルトはテンポの設定が重要。速すぎれば―本調子となるし、遅すぎるとしまりがなくなる。ここではまさに中庸のテンポが採られ、旋律のフレ―ジングはもとより経過的なパッセージも実に丁寧、きわめて表情豊かな表現を達成している。マンハイムで書かれた、ピアノ・ソナタ ニ長調K311と、ハ長調K309のとくに終楽章が見事。またモーツァルトに大きな影響をあたえた」・C・バッハのピアノ・ソナタ イ長調作品17 - 5が収録されているのもしゃれている。(城間 勉)
・ショパン (2007年10月号)
今月のおすすめ  壱岐邦雄   

07年4月茅野市民館で録音。一聴するとマイルドな美音で優雅に奏でてモーツァルトのイメージどおり。でも、それだけでない。たとえば KV 310の第1楽章展開部。崩れ落ちてくる第1主題を左手のトニカがズシンと受け止めたり、第2主題主部の終わり近くで右手の上行スケールを左手が幸甚なソノリティで受け継ぐ。こうしたドラマティックなシーンは随所にみられ、K3111第3楽章で軽快に舞うロンド主題にいきなりオクターブがフォルテで割って人るあたりは、まるでケルビーノにいらだつアルマヴィ―ヴァ伯爵を思わせたりする。たんなる美演でなくオペラ作家モーツァルトの天性を穿っての秀麗演。
・レッスンの友 (2007年11月号)
CD探訪   

久元祐子によるモーツァルトである。久元は、以前よりモーツァルトのレクチャーリサイタルを行っており、朝日新聞の「天声人語」にも紹介されたほか、「モーツァルトはどう弾いたか」(丸善出版)、「モーツァルトのクラヴィーア音楽探訪」(音楽之友社)、「モーツァルト〜18世紀ミュージシャンの青春」(知玄舎)など、モーツァルトについて執筆でも活躍中である。モーツァルトについて研究しつくしているといっても過言ではないだろう。そのことは勿論演奏にも反映されており、本ディスクでも素晴らしい演奏を聴かせている。

CD批評 2005