コンサート批評 (2023)

  Yuko HISAMOTO  Concert

コンサート批評
2023年
2022年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2012年
2011年
2010年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
アンケート
2003年
2002年
CD批評
2023年
2021年
2018年
2015年
2011年
2009年
2007年
2005年
2004年
2003年
2000年
1999年

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会Vol.1
(2023.11.7 サントリーホールブルーローズ)

音楽の友 2024年3月号
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会Vol.1
2022年にモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会を終えた久元が、新たにベートーヴェンのツィクルスをスタート。第1回は初期の作品ということもあり、とくに最初の「第1番」op.2-1には古典派の先輩たちの教えが聴こえる。とはいえ革新的なベートーヴェン。音程やリズムに尖ったアプローチが見られ、「第5番」では中期や後期の作品を予感させる瞬間もある。使用楽器は久元愛奏の「ベーゼンドルファー280VC ピラミッド・マホガニー」。打鍵後の残響が音楽を形づくるような、のびやかで豊かな音色。その選択肢のなかから久元は的確に響きを掴み、古典派の様式・形式の正統を弾き示す。「第4番」はベートーヴェンが好んだ変ホ長調。打鍵された黒鍵の弦のうねりと妖しい響きに、ベートーヴェンがこの調を好んだのもわかる気がした。なによりそう奏した久元の技術に敬服。そして《悲愴》で有名な「第8番」は、変ホ長調の平行調のハ短調。冒頭から印象深く、意気揚々の変ホ長調の世界観を激しく打ち破る。初期のソナタのなかでも緻密に創られた傑作で、久元が「第4番」と並べたことで、2曲の魅力が倍増。等々、一瞬も聴き逃がしたくない名演の当夜。次回以降がまた楽しみだ。
上田弘子
会場=サントリーホール〈小〉/曲目=ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第1番」「同第4番」「同第5番」「同第8番《悲愴》」

コンサート批評 2022 へ