コンサート批評 (2005)

  Yuko HISAMOTO  Concert

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久元 祐子ピアノ・リサイタル(2005.9.13)

音楽の友 2005年11月号
 東京芸大と同大学院に学び、演奏と著述の双方にユニークな活動を続けている久元祐子は、ダルツィンスの「ソナタ第2番」、モーツァルト・中村初穂補作の「幻想曲とフーガ・二短調K397」、モーツァルトの「ソナタK311」、ブラームスの「3つの間奏曲」、ベートーヴェンの「ソナタ第32番」を演奏した。
東京文化会館 久元は、滑らかで達者なテクニックと自然でムラのないタッチを駆使して、美しく豊かな感情の起伏を特色とした、音楽的でふくよかな表現を聴かせ、彼女独特の個性的で魅惑的なピア二ズムを楽しませてくれた。5曲全体を通じてなかなか高度な演奏水準が保たれていたが、彼女が関心を抱いているというラトビアの作曲家のダルツィンスは、そのロマンティックで不可思議な幻想的世界が、鮮やかに追体験されたといえる演奏であり、特に筆者の興味をそそった。また、奔放で熱っぽい表現力が、作品のドラマテイックな精神の深みと見事に直結したベートーヴェンも、なかでも出色といえる出来であった。(柴田龍一)

ショパン 2005年11月号
久元祐子はラトビア音楽を紹介するのに情熱を注いでいる(日本ラトビア音楽協会理事でもある)。
 ということで最初にラトビアの作曲家ヴォルフガングス・ダルツィンス(1906−62)のピアノソナタ第2番を弾いた。ダルツィンスは同年生まれのショスタコーヴィチ同様、伝統的な作風を持つ。このソナタも3楽章からなり、第1楽章ではドビュッシー(とくに「アラベスク」)を、フィナーレではバルトークを思わせたりと、親しみやすい佳曲と聴いた。
 次はモーツァルトの幻想曲ニ短調K397とソナタニ長調K311。K397ではミサ・ロンガK262からのフーガ(中村初穂編曲)を追加して弾いた。幻想曲はなめらかなレガートでどこかためらうような風情で始まり、きめ細やかにファンタジーを紡いでいく。次いでのフーガはそうした幻想を断ち切るように強固に響かせ、厳粛に奏でた。
 後半はプラームスの間奏曲作品117とベートーヴェンのソナタ第32番。プラームスはマイルドな音色で聴き手を優しく満ち足りた気分に誘った。べートーヴェンは一転して鋭美のピアニズムで第1楽章を溌剌と響かせ、アリエッタを爽やかに歌い、フガー卜で嬉々と弾んでと、ベテランならではの快演であった。(壱岐邦雄)
 
ムジカノーヴァ 2005年11月号
東京芸術大学を経て同大学院を修了した久元祐子は、国内外で演奏活動を行うかたわら、国立音楽大学の講師、セレモア・コンサートホールの顧問を務め、また、CDのほか著書や論文も発表している。
 日本ラトビア音楽協会の理事でもある彼女は、当夜のはじめに、ラトビアの作曲家V・ダルツィンスの<ピアノ・ソナタ第2番>を演奏した(日本初演)。落ち着いた運びのなかで、美しい音色を作ってゆく久元の演奏には、立体的な空間を感じ取ることができた。次に、モーツァルトの<幻想曲ニ短調>K397が、フーガが想定されていたとの仮定により、<幻想曲とフーガ>として演奏された。フーガ部分の補作・編曲者は中村初穂であり、モーツァルトの<ミサ・ロンガ>に<クレド>に基づいている。久元の演奏はドラマ性を持っていたが、細部にやや乱れがあったことは惜しまれる。<ソナタ ニ長調>K311では、明るい音色と優雅な雰囲気が印象に残る。プラームスの<3つの間奏曲>作品117では、旋律の歌い方のうまさが注目された。ベートーヴェンの<ソナタ第32番>は、技術的に荒い面もあったが、久元の深い思い入れの伝わる情熱的な演奏だった。(原 明美)

 

「ウィーンで出会った作曲家たち」 (モーツァルティアンフェライン) (2005.4.10)

モーツァルティアン・フェライン事務局レター  (2005年5月)
今回は、恒例の年一回の久元祐子先生のピアノ・コンサートでした。暖くかすかに香る桜満開の、吉祥寺・丼の頭公開近く、ラ・フォルテで行なわれたのは今年で4回目、モーツァルトのピアノ・ソナタを中心に、彼と交際の深かったウィーンで出会った大勢の作曲家のうち、クレメンティ、パイジェルロ、コージェルーホ、ヨーゼフ・ハイドン、の四人の作品が取り上げられました。

・モーツァルト: ピアノ・ソナタ ハ長調 K545
・モーツァルト: ボーマルシェの「セヴィリアの理髪師」のロマンス
   /私はランドールによる12の変奏曲 変ホ長調  K354
・クレメンティ: ピアノ・ソナタ 変口長調 作品47の2 第1楽章
・パイジェルロ: ピアノ・ソナタ
・モーツァルト: ピアノ・ソナタ ハ長調 K330 第1楽 第2楽章
・モーツァルト: 幻想曲 二短調 K397
― 休憩をはさんで ―
・モーツァルト: ロンド イ短調 K511
・コージェルーホ: ピアノ・ソナタ 変ホ長調 作品26の3 第1楽章
・ハイドン: ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVl-49 第1楽章
・モーツァルト: ピアノ・ソナタ ニ長調 K284 「デュルニッツ」 第3楽章
・モーツァルト: ピアノ・ソナタ イ長調 K331 「トルコ行進曲つき」
アンコールとして
・ショパン: ノクターン ()p9-2

 これだけの盛り沢山の名曲に満ち溢れた作品を、毎回のように各曲目ごとに久元先生のくわしいレクチャ一付き、ただ聴いて楽しんだ、というよりも出席した会員及びその他の方々にとっては実に素晴らしい勉強会であったともいえるのではないでしょうか。
 久元先生の非常にかろやかなピアノ・タッチは、ポピュラーな初心者用の最初のK545から、おや!と首を傾けるほどごく自然にスルスルとスマートな演奏を始められ、筆者にとっても、ああ、これが本当のモーツァルトなのだ・・・、としばし感慨無量の境地でした。
 3曲目のクレメンティと9曲目のハイドンの曲は、今までにどこかで聴、いた記憶がありますが、4曲目のパイジェルロと8曲目ののコージェルーホの作品は筆者は初めてでした。しかし何れも非常に親しみやすい名曲と感じました。
 最後のアンコールはショパンの有名なノクターン Op9-2、一同割れるような拍手で終了・・・その後、久元先生を囲んで一同揃って同ラ・フォルテの一階で和やかに懇親会が行なわれました。何はともあれ、心にひびく効果は格別のものがある印象深いレクチャー・コンサート。1999年9月8日付の朝日新聞・天声人語にも取り上げられたほどの名ピアニスト、久元先生には、今後も毎年4月にはぜひ引き続きお願いしたい次第です。
 なお最後に一言、久元先生が去る1月30日(日)に銀座のヤマハのサロンにてフランツ・リストの曲を演奏された際、ア
ンコールでモーツァルトのピアノ・ソナタハ長調 K545の第1楽章を緑のたすきで目隠し演奏をされ聴衆一同びっくり。フェラインの例会でも以前このような演奏をご披露をして頂いた事がありましたが、モーツァルトの生れ変りかと思われるほどの先生を我々は誇りに思っております。(H.K)

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