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久元祐子レクチャーコンサート「モーツァルトが愛したピアノフォルテの響き」(2017.9.29)
- ショパン 2017年12月号
- 国内外の主要オーケストラ、カルテットとの共演で高い評価を受けている久元祐子のレクチャーリサイタルが9月29日五反田文化センター音楽ホールにて行われた。今回は2台のフォルテピアノを聴き比べる意欲的かつマニアックなもの。各楽器の違い、ペダルが無く膝を上げてペダルの操作をすることや現代ピアノとの音の違い等分かりやすい説明があり、特にピアノを弾く人にとって興味深い内容であった。さて、2台のフォルテピアノの音であるが現代のピアノの音に慣れた耳にはペンペンとした音が最初は気になるのだが慣れてくると音量は小さいながら微妙なニュアンスをデリケートに伝える独特の世界に引き込まれていく。最近発見された自筆譜を基にした版で弾かれたモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番《トルコ行進曲付き》は耳慣れた版と違う部分も多く、新鮮であると共に説得力を感じた。今までの版は何だったのかと思えなくもない・・・・・。この版が広く普及されることを頼う。古い時代の楽器での演奏の再現という観点からすると、全休的にもっと自由な解釈でトリルやカデンツァの挿入などがあってもおもしろいのではないかと思った。当時はどのような演奏が繰り広げられていたのか・・・・・、興味の尽きない演奏会であった。(森曠士朗)
久元祐子 モーツァルト・ピアノ・ソナタ全曲演奏会vol.3(2017.9.08)
- 音楽現代 2017年12月号
- 前半はまず幻想曲二短調K397。フォルテピアノも弾く久元だが、今回はベーゼンドルファーの88鍵の最新モデル280VC が使用され、音の条件も万全。スケールも大きく表現力豊かなモーツァルトを構築。コーダは久元の補筆により冒頭の音型が再現され普通使われる楽天的な終結が暗い真摯なものに変わっていた。次はグレトリの歌劇「サムニウム人の結婚」の合唱曲「愛の神」による八つの変奏曲へ長調K352。子守歌のように平穏な主題と充実した変奏技法が活かされた自家薬籠中のモーツァルト。そしてピアノ・ソナタ・イ長調K331トルコ行進曲付きは数年前発見された自筆譜に基づく新版で細部は異なるものの、演奏自体はこれまた索睛らしく練れていた。
後半はピアノ・ソナタが2曲でヘ長調K332と変ロ長調K333。前者は初版譜によりどちらも愉悦に満ちた名演だった。アンコールは何とショパンが2曲でノクターン2番に子犬のワルツ。(9月8日、サントリーホール)(浅岡弘和)
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