県立西宮高校音楽科の皆さんへ ③

学期末の試験や入試の準備などで忙しい季節かと思います。インフルエンザなども流行っていますが、みなさんお元気ですか。

1月17日にHAT神戸で行われた「阪神淡路大震災・兵庫県追悼式典」では、長谷場純一先生の指揮のもと、西宮高校のみなさんが名演奏を披露してくださったとのこと。奏でられた音楽が深く会場にお集まりの皆様の心に響いたことと思います。

さて、Q&Aの続きです。
・多様な種類の音色を出すには、どのように練習したらよいですか。

ピアノは様々な音色を出すことができる楽器と言われますが、実際にはハンマーで弦を打つという原理で音が出ますので、基本的には打楽器です。そして力点と作用点が最も遠いところにある楽器と言っても良いでしょう。
管楽器は口をつけていますし、ヴァイオリンも弓を手で持ち耳の側にある弦をこすります。ピアノの場合、鍵盤かを押しハンマーが弦を打つまでのアクションが、客席からは見えないブラックボックスでもあります。ここで何が行われているか、どういう仕組みで音が出るかを知り、「ブラックボックス」でなくなることも大いに助けになるでしょう。

そして物理的には、鍵が沈む深さ1センチをどう押すかで音量と音色が決まります。音量は、速く押せば強い音、ゆっくり押せば弱い音。そして速くはじくように押すのか、ゆったりと慈しむように押すのかで、音色も変わってきます。鍵を押す方向も関係してきますよね。

食パンを押してみて自分のタッチのいろいろな種類を目で見て確認し、研究する、というチェンバロ奏者の方がおられました。パンが美味しい神戸の皆さんは、朝ごはんにパンの人が多いかもしれません。食べる前に手をよく洗って?!試しにやってみてください(笑)。

指の腹に近い柔らかいところで押せば柔らかい音色、爪に近い硬いところで押すと硬い音色、ということも言えます。いずれにせよ、方法論を考えるというより、自分はこんな音が欲しい、というイメージを持つことが一番大切ではないかと思うのです。身体は、脳の指令によって動きます。その脳で強くイメージした音色に近づこうとすれば、訓練を受けた指は自然に動いてくれることでしょう。要は、イメージをどう持つかで音色が決定されるように思うのです。

色、形、香り、風景、感情、声のトーン、、、、パッと考えただけでも無限にイメージできますね。
この音は、曲の中でこういう音が欲しい!というはっきりとしたイメージ、欲求を持てるようになるかどうかが、多様な種類の音色を獲得するポイントです。

そして、どのように練習するか、というより、どれだけ多くの音色の引き出しを作るか、が先で、耳からいい音をたくさん吸収し、脳に蓄えておくのです。そしてさらにイメージに近づくためにあれこれ自分で試していく段階で多くの音色が生まれていくことでしょう。

オーケストラの楽器、和楽器、自然界の音などを心に刻むのも一つの方法でしょう。オルガンも含め、様々な鍵盤楽器に触れる機会があれば逃さないことです。また詩や絵や文学、それに演劇などからインスピレーションをもらうこともあるでしょう。コンサートに行き、感動的な音色に出会い涙した瞬間、その音色はきっと心に残っていくことでしょう。

多感な年齢は、たくさんのことを感じ、自分の中に取り込むことができる大きな可能性を持っているということです。たくさんの感動に満ちた一年になりますように!

コメント