熊本に地震

ここ数日、昼間は大学、夜練習、深夜に本の最終校正、という生活パターンが続きました。
忙しくなって一番犠牲になるのが睡眠時間。昨夜も徹夜覚悟で赤ボールペンを手に原稿とにらめっこしていた矢先、携帯電話からメッセージ受信を知らせる音が鳴りました。
「○○さんは無事を報告しました。」とあります。
なんのこと?
それから暫くして、熊本が大変なことになっている事を知り茫然としました。
熊本にはこの数年、演奏会やセミナーでお伺いしており、お世話になっているピアノの先生や楽器店の方も震源地近くにおられます。
今朝、連絡のつく先生方がご無事なことがわかりほっとしましたが、被害状況がテレビに映し出されるにつれ、暗澹たる気持ちになりました。楽しく散策した見覚えのある通りに亀裂が入っているのを目にし、胸が痛みます。
以前講座をさせていただいたことがある楽器店の中も、ピアノの先生のお宅の中も物が散乱しているとのこと。捜索、避難、ライフラインの確保、、、など緊急かつ深刻な問題が一気に熊本に押し寄せます。
余震が続き、どんなにか不安な一夜を過ごされたことでしょう。心からお見舞い申し上げます。
ざわついた心のまま、編集のOさんとの最終校正を済ませ、午後からは明日の湯河原での演奏会のためのリハーサルに入りました。
モーツァルトの歌曲とアリア、シューベルトの歌曲、そして日本の歌というプログラム。体調不良でキャンセルされた大御所のA先生の代役は、私と同年代のメゾソプラノ歌手、井坂惠さんです。井坂さんとは初対面でしたが、気さくで明るく優しく自然体の素敵な女性でした。
高田三郎の「くちなし」という曲は、今回初めて伴奏する曲です。高野喜久雄の詩は、亡き父が植えたくちなしの木に今年も実がなり、心が震える、、、亡き父の教えが聴こえてくる、、、というような内容ですが、歌に寄り添いピアノを弾いていて、胸が震えて、ふいに涙が溢れてしまいました。
冷静さが要求される伴奏という仕事。伴奏していて泣く、なんてことは、あってはならないことなのです。自分でも自分の涙に戸惑ってしまいました。
井坂さんが20歳でお父様を亡くされたそうで、その想いが重なった歌唱だったからなのか、私自身父を想い出したのか、疲れた心に染み入るような歌声が癒してくれたのか、、、理由はわかりません。
今夜から湯河原に入ります。

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