イモラ音楽院、そしてアカデミア・フィラルモニカ

ボローニャから電車で小1時間。イモラ音楽院に向かいました。イタリア・モーツァルト協会のボラーニ会長さんが、イモラ音楽院ピアノ科のマルガリウス先生をご紹介くださったのですが、「ちょうど試験シーズンでピアノ科の先生が皆忙しい。時間がとれるのは校長先生だけ。」とのこと。校長先生自らご案内くださる・・・という日本では考えられない展開?!となりました。

フランコ・スカラ校長先生は、最近、教授活動を引退され、校長先生になられたばかり。ゆっくりと学内をご案内くださり、ピアノ教育のシステムや楽器のお話などお聞きすることができました。

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イモラ音楽院は、1300年頃に建設されたお城が音楽学校として使われています。14世紀に打ち込まれた大砲の弾が落ちていたり、城壁の門をくぐってキャンパスに入ったり・・・とタイムスリップしたような気持ちになりました。土日は、観光客に開放されていて、結婚式も行われているとか。

イタリア旅行2014 (255)

大学ではなく、自由な音楽学校ですので、ピアノに特化した教育が行われており、ポリーニ、アシュケナージ、ラザール・ベルマンなど一流の現役ピアニストが、指導にあたってきました。最近では、日本、中国、韓国などアジア勢の留学生が多く、学内コンクールでも日本人が入賞者を占めたこともあったとか。

「音楽に一番必要なのは、才能と素質」というコンセプトのもと、才能を選び、その素質を伸ばす環境が与えられ、1人の教授が10人ほどを受け持ち、生徒を鍛えていくそうです。これまでに最も才能があったと思われる卒業生の名前を3人あげてくださいましたが、そのうち2人がロシア人、1人が韓国人でした。

スカラ先生とお話ししているうちに、歴史的ピアノに話題が移り、先生自らが大変な蒐集家であることがわかりました。お持ちのピアノはなんと120台!ちょうど120台目に到達したとき「自分は狂ってる!」と思い、そこでストップしたとおっしゃいます。少年がラジオを壊してまた作りなおしたり・・・というのと同じように「ピアノを壊して改造して遊んだそうです。けれど「君が持っているベーゼンドルファーの1829年製は持っていない。羨ましいなぁ、売ってくれないか?」と冗談のような本気のような話で盛り上がりました。イモラ音楽院の学生は、ピアノ科に入学すると同時に、フォルテピアノのレッスンも自動的に受けることができる、という恵まれた環境にあるそうです。
歴史的ピアノの演奏が、現代ピアノの演奏を豊かにすることを力説されておられました。

大学近くのレストランで美味しいランチをいただき、再びボローニャへ。
アカデミア・フィラルモニカ本部を訪ねました。モーツァルトは、ボローニャでマルティーニ神父の教えを受け、アカデミア会員になるための試験を受けています。試験会場になった場所は、現在はコンサートホールになっており、定期的に演奏会が催されています。

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試験における「モーツァルトの答案」なるものが、3つ残されているそうです。モーツァルトの回答は、当時の保守的な面々には革新的過ぎると判断したマルティーニ神父が手を入れて穏当な音にしたため、無事合格したらしい。。。。とのことでした。写真は、モーツァルト合格を認めた当時の会員のサインです。モーツァルトのキャリアアップを願った父レオポルトの嬉々とした顔が目に浮かびます。

イタリア旅行2014 (298)

マルティーニ神父の肖像画のオリジナル、ロッシーニらの手稿譜、研究図書館の古書が並ぶ書棚は圧巻です。アカデミア楽器コレクションには、17世紀のオルガンや1592年のリュートなどが展示されていました。歴史に思いを馳せた濃い一日が終わりました。 2014・9・17

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