モーツァルティアン・フェライン例会 

原宿アコ・スタディオ で開催されました モーツァルティアン・フェライン 例会に出演させていただきました。
ベーゼンドルファーの柔らかな音で、ウィーン時代初期の名曲2曲、ヘ長調 KV332 と 変ロ長調 KV333を取り上げました。

この2曲の魅力の秘密、作曲技法と楽譜が生まれるまでの過程、形式とスタイル、当時の楽器と曲の関連など、時間がいくらあっても足りないくらいです。

今回は、KV333、第1楽章44小節目の音に関する論争のことにも触れました。
この論争は、1985年9月号から1987年1月号まで延々と続いた中田喜直氏の問題提起が発端でした。
中田氏は、「モーツァルトの音が違っている」と指摘。
これに対し、海老澤敏先生が反論。
その論争に、島岡譲先生、小林仁先生らも意見を述べられました。
この日は、実際に音を聴いていただきながら、自筆譜がどのように楽譜になっていくか・・・というお話も交え、この曲を聴いていただきました。

残された楽譜の音を、モーツァルトの「間違い」と見るか、「意図」と見るかは、この箇所に限らず、モーツァルトの作品のさまざまな箇所で問題になってきます。
よく問題になるのは、同じ音型が2度出てくるときに、違うことをしている場所です。
sf をつける位置を間違えたのか、あえて変えているのか、アーティキュレーションのスラーの長さが違っているのは、筆がすべったのか、あえて変えているのか・・・などなど。

KV332では、初版と自筆譜の両方を聴いていただき、モーツァルトの即興演奏、装飾法について思いを馳せました。
KV333では、形式と流れについて、楽器の音色と音域がいかにピアノ曲に影響を与えるかについて、実際の例を挙げて、聴いていただきました。

モーツァルティアン・フェラインのメンバーのみなさんは、それぞれにモーツァルトに特別な想いを持っておられます。
楽譜持参の方、イタリア、フランスに留学されたピアニストなど、モーツァルト通が集まった原宿の地下スタジオ。

最後は、KV333の第3楽章に、現代の作曲家 Boullet氏が創ったカデンツァを入れて、終結部を弾きました。
モーツァルトのカデンツァのほうが、全体のバランスがいいのは当然なのですが、コンチェルトのスタイルで書かれたこの曲、カデンツァの部分を差し替える自由は、現代のピアノ弾きに与えられていると思います。
IMSLPから譜面を起こし、アンコールにしました。

終演後、近くのイタリアンで打ち上げ。
ほとんどの方が参加され、モーツァルト談義に花が咲きました。

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