墨画の世界

銀座画廊美術館で「GROUP 82 墨画 BOKUGA」を鑑賞させていただきました。

小学生のころ、教科書に載っていた雪舟の絵をじ~っと見て空想の世界に遊んだ日のことを覚えていますが、墨の白黒の世界から心に無限の色が広がります。

笠原三尚さんの「雪の佇まい」は、お寺に降る雪を題材に描かれたそうです。
静けさの中からしんしんと降る雪の音が聞こえ、白い雪の記憶、冷たく澄んだ空気までも伝わってくるようでした。墨と紙で立体感が出る不思議を感じました。

会場では松下黄沙先生にお目にかからせていただきました。
京都のご出身とのことで、長い歴史と伝統の中で暮らしてこられた空気が感じられます。同時に、現代に生きる芸術家としてまっすぐに対象に向かわれている自信が、そばにいる私たちまで凛とした気持ちにさせてくださる方でした。
お話ししていて、先生の優しさと強さ、エネルギーと温かな包容力を感じました。

「クスノキと両面仏」を拝見し、まったく迷いのない線に驚きました。
とても速く書かれるとのことでしたが、一瞬にして対象をとらえ、それを白いキャンバスにすくいとり、ご自分の世界として描かれるその潔い営みが、見るものを圧倒させるのかも知れません。
音楽作品で言うと、そこになくてはならない音符が、そこにあるべくして存在している、という感じでしょうか。

「椿と小さな仏」は、魅力的なファンタジーで、椿の淡い色合いが薄闇の中からほんのり浮かび上がり、幸せなお顔の仏様がすっと座っておいでです。
香りが立ち上り、音楽が聴こえてくるようなひとときでした。

墨画の世界には、絵と書の両方の魅力があり、ともに音楽に通じているように感じました。

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