ピアノの歴史~楽器と作品のコラボレーション~

PTNAの講座で「ピアノの歴史」について、演奏を交えながらお話しさせていただきました。
クラヴィコードを持ち込み、触れる体験もしていただきました。

ピアノが生まれておよそ300年。
クリストフォーリの発明、ジルバーマンの研究と制作、大バッハとのかかわり、ジルバーマンの弟子とも言われるツンペの亡命によってもたらされたイギリスでのピアノフォルテの発展、本格的なピアノの時代、と目まぐるしく時代も場所も話が飛びました。

私たちは、どうしても後の時代から色眼鏡をかけて前の時代を見てしまいがちです。
音楽にしてもロマン派、現代の曲を知った上で古典やバロックを見るのはある部分当然のことなのですが、
自由にタイムマシンに乗るような感覚で古い時代に飛び、その時代の感覚を感じることも、演奏に必要だと思うのです。
現代から見ると、馬車は遅い乗り物と思ってしまいがちですが、当時は馬車が一番速い乗り物だったわけですし、電気のない時代は、蝋燭の炎とオイルランプの光が、もっとも高い明度でした。
楽器でも、今の楽器に比べれば音が小さい、と思うクラヴィコードも、当時は豊かな響きだと感じられ、人々は響きの中に細かなニュアンスを感じ取ることができたのかもしれません。
楽器の進歩の過程で失われてしまったこまやかな色合いや音色を感じ、そのような楽器と感性を前提にして、その時代の作品はつくられたことを知り、感じることは大切なことだと思います。
かつては、作曲家と楽器制作家の関係も今よりも密だったようです。楽器と作品は、切っても切れない関係にあったと言えましょう。

今日は、eラーニングの撮影も入って、会場に着くとものものしいカメラの装置が並んでいました。
途中でピンマイクがはずれてしまったり、風邪をひいているせいか、咳き込んでしまい、お優しい受講生の方がお水をくださったり、お話ししきれなかったことなど、自分としては心残りの部分もありましたが、
「日常ピアノを教える中で、全く考えてもみなかったことを聞かせていただいた」
と遠くからいらした先生がおっしゃってくださり、ありがたかったです。

熱心なピアノの先生方にとっての「ピアノという楽器のイメージ」に、何かを付け加えることができたならうれしい限りです。

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