久元祐子 記事

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Intervies 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 Sonorite 08年12月5日
 ピアノと向き合うためには演奏技術だけではなく、、音楽の本質を「多角的」に分析する力も持ち合わせていなければならない。久元 祐子は、レクチャー付きのコンサートを精力的に行っており、リサイタルではモーツァルト時代のクラヴィーアを持ち込むなど、ピアノの原典への理解も兼ね備えている。「歴してkな文脈や舎kてきな背景から掘り下げることを目指しています」と本人も述べているとおり今日の公演もそんな久元のこだわりが随所に見られる演奏会にことだろう。 (文/田賀浩一朗)



― 中学生時代横浜でお過ごしになったようですが、横浜の印象は?

  幼稚園から小学校低学年までを横浜市港北区日吉で過ごしました。 私が子供の頃は、たくさんの自然が残っていて 田圃で蛙をとって農家の方に叱られたり、れんげ畑で寝っ転がりながら雲を何時間も眺めていたり、 綱島の山中を散策していたらいつのまにかあたりが真っ暗になってしまい途方に暮れながらも満天の星空に見入ったり、、、 自然の中で過ごした想い出がたくさんあります。 円形校舎の下田小学校に通ったときから 港、海というものが身近な感じで、 外国に開かれている、という印象がありました。

―モーツァルトの協奏曲をクラヴィーアで演奏されることについて、 モーツァルトのピアノ協奏曲を演奏する作品解釈や演奏上の留意点などについてのお考えをお聞かせ下さい。

 モーツァルト時代のクラヴィーア(鍵盤楽器)と現代のピアノとでは、 音量、タッチ、音色、鍵盤の深さ、ハンマーの重さ、 すべてまったく違います。 当時の楽器などを弾く機会も多いのですが、 モーツァルトの音楽の持つ軽やかさ、繊細な息づかいは、 まさに当時のピアノフォルテを使って作曲した中で生まれた世界だと思います。 現代の楽器でモーツァルトを弾く場合、 コントロールなしに演奏すると 大げさになったり、無神経になったり、下品になったりしてしまいます。 かと言って、がんじがらめの窮屈な感じになったり、 表現の幅を抑えてしまっては、 生き生きしたモーツァルト感が出てきません。 気品を失わずに、けれどモーツァルトの持っている 生き生きした感性、冒険心、当時の楽器の極限ギリギリまで使ったような挑戦、 大胆さと繊細さを併せ持つ魅力、 そういった彼の美学を 現代の楽器でのびやかに蘇らせたいと思っています。

―ピアノとは久元さんにとってどのような存在でしょうか?

 子供の頃から弾いてきていますから、 最も親しい心の友という存在です。 私のそのときどきの体調、気持ち、思いが 言葉以上に映し出されてしまう鏡でもあります。 構造としては、ネコが踏んでも音が出る楽器なのですが、 さまざまな楽音、音色を出せる可能性は無限大です。 私にとって、あとからあとから発見がある 玉手箱のような世界です。 しかもピアノ演奏は、引力、重力に従った動きをする 実に自然な世界です。 これからも弾ける限り、 可能性を求めて磨いていきたいと思っています。

神奈川フィル、又は飯森範親氏について共演されることの抱負などあればお聞かせください。

  伸びやかな音と瑞々しい感性の神奈川フィルの演奏会は、 これまで何度も客席で聴かせていただいています。 今回共演させていただくのを心から楽しみにしております。 特に今回の第248回定演は、 モーツァルトの命日である12月5日です。 その日に、私の最も好きな協奏曲であるK488を ご一緒できるとあって感激一入です。 天国のモーツァルトに届くよう 祈りをこめて演奏したいと思っています。 飯守さんとは、初めて共演させていただくのですが、 実力とともに、あたたかいお人柄で多くのファンを持っておられるマエストロとの共演、 光栄に思っております。

―最後に神奈川フィルのファンに一言メッセージをお願いします。

 定期演奏会にデビューさせていただき光栄です。 心から御礼申し上げます。 モーツァルトを通じて 皆様とひとときをご一緒させていただく幸せをかみしめています。 今回弾かせていただきますK488は、 イ長調というモーツァルトにとって特別な調性でもあり、 独特の内容を持っています。 この曲の魅力が出せるよう 心をこめて演奏させていただきます。


コンサートで夢の共演 小林研一郎さんと久元祐子さん 福島民友 08年4月18日
東京・赤坂のサントリーホールで15日、第10回セレモアつくばチャリティーコンサートが行われた。本県出身で世界的なマエストロ・小林研一郎さんと本県ゆかりのピアニスト・久元祐子さんが共演し、観客を魅了した。
 総合コンサルティング企業グループのセレモアつくば(辻正司社長)の主催。約2000人が来場した。
 日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、曲目はベートーベンの「エグモント」序曲、交響曲第5番「運命」など5曲。壮大なスケールで人気のベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」で、小林さんと久元さんが共演。小林さんの情熱的で力強いタクトのもと、久元さんは卓越した表現力と技術で、全3楽章を見事に演奏した。久元さんは、会場からのアンコールに応えベートーベンの「エリーゼのために」を披露した。
 演奏後、小林さんは「素晴らしい演奏。このような才能ある方と共演できてうれしい」、久元さんは「あこがれの小林さんと共演でき、夢のようです」と演奏を振り返った。


諏訪響 久元さんと共演 茅野で信毎ファミリーコンサート信濃毎日新聞 08年3月25日
 信毎販売センターの茅野、下諏訪、原村営業所は23日、「信毎春休みファミリーコンサート」を茅野市民館で開いた。地元の諏訪交響楽団とピアニストの久元祐子さん=東京都=がベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」で共演。親子連れら約500人が聞き入った。
 コンサートは二部構成、第1部は、久元さんが「人生の応援歌とも言っていい力強さがある曲」と紹介した「皇帝」のほか、クラシック2曲を演奏。第2部は、諏訪交響楽団がNHK大河ドラマ「風林火山」のテーマ曲を演奏したほか、諏訪地方で活動するアマチュア劇団「シューティングスター」と楽団員が一緒に楽器紹介も兼ねた音楽劇を披露し、会場を湧かせた。
 ピアノをはじめて3年目という茅野市永明小学校1年の尾高瑠南さん(7)は、久元さんが演奏する手元を前の方の席から熱心に観察。「指の動きが速いし、弾き方も格好良かった」と感心していた。

ベートーベンの魅力 一緒に表現したい 信濃毎日新聞 08年3月22日
 茅野市民館(仲町)で23日に開く「信毎春休みファミリーコンサート」(信毎販売センターなど主催)で、地元愛好家でつくる諏訪交響楽団(諏訪市)と初めて共演。ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏する。「(皇帝は)大好きな曲。ベートーベンのさまざまな魅力を諏訪響と一緒に表現したい」。80年余の歴史がある国内最古のアマチュアオーケストラとの舞台に向け意気込んでいる。
 福岡市生まれで、3歳からピアノを始めた。東京芸大音楽学部器楽科(ピアノ専攻)を経て、同大大学院修士課程を修了。現在は、年50−60回ほどのコンサートで国内外を巡っている。
 「皇帝」は、ベートーベンの5つのピアノ協奏曲中、最大の楽器編成、演奏時間も40分ほどあり、聴き応えは十分。ピアノとオーケストラが一体となる力強さや壮麗さとともに、ピアノの繊細な響きも堪能できる名曲だ。
 日ごろは、ベートーベンのほかに、「ライフワーク」とするモーツァルトや、国内では演奏機会が少ないラトビアの作曲家の作品紹介にも力を入れている。曲の解説などを交えた「レクチャーリサイタル」も好評。 「(クラシックにも)いろんなスタイルのコンサートがあってもいいと思い、始めた」という。
 今回のコンサート会場の茅野市民館には、オープン間もない2005年冬、ホールの音響チェックのために訪れ、演奏。同館のベーゼンドルファー社(オーストリア)製ピアノが新品で、音に磨きをかける「弾きこみ」が必要なため、その後も月1回のペースで同館を訪れている。昨年4月には、モーツァルトのピアノソナタなどをCD録音。同7月にはコンサートを開くなど同館との縁は深い。
 今月13日の夜は、同館で諏訪響との初顔合わせ。指揮者の浜一(はま・はじめ)さん(38)=下諏訪町=と曲想やテンポを打ち合わせながら、約2時間にわたって全楽章を合わせ、ピアノと、団員約40人が奏でる「皇帝」の華やかな音色がホールに響きわたった。
 これまでに東京や秋田のアマチュアオーケストラとの共演経験がある。アマチュアとの共演について「仕事ではなく、音楽のために頑張ろうという感じが伝わる。教えられることが多い」。演奏する「皇帝」については「前へ行く躍動感と、足取りの確かさのバランスを取らなければいけない曲。知と情と意志力のどれが欠けても駄目」と難しさを指摘する。
 残雪の八ヶ岳を望む同館でのコンサートに向け、日々気分は高まっている。「いつかベートーベンを茅野の自然の中で弾けたらいいと思っていた。張り切って弾きたい」

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