Leopold Mozart

作曲家としてのレオポルト・モーツァルト

モーツァルトば学び、その作風を吸収した作曲家としては、まず、父レオポルド・モーツァルト(Leopold Mozart 1719 - 87)を挙げなければなりません。
もっぱらモーツァルトの父親としてのみ歴史にその名をとどめている感がありますが、音楽家としても、18世紀半ばに活動した音楽家の中では、ひとかどの人物だったと思われます。

ヴァイオリン奏法ニュルンベルクの出版業者、ヨアハン・ウルリッヒ・ハフナーは、クラヴィーアのためのソナタをはじめ、器楽曲の作品集を出版していますが、この中には、レオポルドの作品も含まれています。
また、彼が著した《ヴァイオリン奏法》、正確には、《基本的なヴァイオリン奏法の試み》(右は当時出版された表紙)と題されたこの本は、ヴァイオリン奏法の技術的な教則本として、高く評価されています。邦訳も出版されており、今日なお愛読されています。
1763年、レオポルドは宮廷楽団の副楽長に昇進しました。そして、大司教シュラッテンバッハが死去し、その後をヒエロニムス・コロレドが継いだ後も、宮廷楽長になることを望み続けましたが、結局その望みはかないませんでした。その原因としては、音楽家として大成した息子が、最悪の形で大司教と決裂してしまったことと無関係ではないでしょう。
もしも天才モーツァルトが生まれなかったとしたなら、音楽家レオポルド・モーツァルトの名は、数々の教会音楽、器楽音楽、室内楽を作曲し、優れたヴァイオリン教則本を著したザルツブルクの「宮廷楽長」として、18世紀音楽史の片隅にその名を残したと思います。
レオポルト・モーツァルトの作品
レオポルド・モーツァルトの作品 レオポルドには、オラトリオ風のカンタータ《キリストの埋葬》、学校劇《仮面の古代》などの附帯音楽や教会音楽のほか、娯楽音楽として演奏されたと考えられる管弦楽作品が残されています。中でも《橇遊びの音楽》は、軽快でとても楽しい音楽です。
ソナタとしては9曲が残されているようで、うち6曲は、最初に仕えたトゥルン・ウント・タクシス伯爵に献呈されたトリオ・ソナタで、残りの3曲が、1760年前後に作曲されたという3曲のクラヴィーア・ソナタです。私は、まだこれらのクラヴィーア・ソナタのスコアを手に入れていません。
また、クラヴィーアのための小品としては、「四季」と題された12曲の曲集があります。単純なつくりですが、素朴でおおらかと申しますか、土の香りのする音楽で、洗練された息子の作風とはかなり違うように思います。

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